伊勢の外宮の神、豊受は内宮の神、天照大御神の御分身です
次に、「 世々 の 弓 前 和 が、 相 伝え し 秘 聞」 の うち の、「 秘 聞」 という 表現 に、 触れ て おき ます。 「秘 聞」 とは、「 秘密 に し なけれ ば なら ない 言い伝え」 です。 「表 に 出し ては いけ ない 伝承」、 それ が、 この「 委細 心得 の 中 には ある」 という こと です。
その一例をあげてみます。
例えば、 伊勢 の 外宮 の 神 の 鎮座 の 由来 に関して は、 記紀 の 伝承 と「 委細 心得」 とでは、 まるで 違っ て い ます。
記紀 からでは、 この 外宮 の トヨ ウケ の 神 の 正体 が、 よく 分かり ませ ん。
天照大御神 の「 御饌 津 神」 と なっ て お 仕え する 神 の よう に 見え 一段 神格 が 低い 印象 を 与え て い ます。
とにかく、 記紀 や 伊勢神道 に 伝わる 伝承 からでは、 この 両 宮 の 関係 は わから ない、 という 印象 は どうしても ぬぐえ ませ ん。
記紀では、内宮が先に創建されて外宮は後から出来たことになっていますが、委細 心得では、外宮が先に祀られていて内宮は後から日神オオヒルメムチの荒魂として祀った、と記しています。
わたしは、これが伊勢成立はじめの真相だと思います。
だって、伊勢の荒魂としての天に輝くオオヒルメムチ(目に見える太陽)は、海で活躍していた時代の天族時代の倭人はこれを祀ってはいなかったからです。
それは倭人は基本的には海洋生活なので、日である荒御魂は海から単純に拝めばよかったからです。
倭人が、また内地の縄文人が祀っていたオオヒルメムチ、すなわち天照大御神は、和御魂(にぎみたま)としてのそれであったのです。
それが倭人が祀るトヨウツカの神、後の外宮の神、豊受大神(トヨウケの大神)なのです。
元伊勢と言われているほとんどの神はこの外宮の神だったことが分かっています。
だから、倭人天族が3世紀後半ごろに打ちたた伊勢の始めの宮代は外宮の神、豊受の神であったのです。
これが委細心得の記述です。
だからこそ「外宮先祭」の伝統があるのです。
また、中世に、外宮を内宮より下位に置く説に外宮の度会氏が猛反発した本当の理由もそこにあったのです。
もっとも、外宮を上位にせんと、内宮の天照大御神に対抗してその祭神を天御中主にしているのもお笑い草ではあります。
正しくは、内宮の天照大御神は太陽の奇御魂にして荒御魂、外宮の豊受大神は天照大御神の和御魂です。分霊です。
これが委細心得の見方です。
伊勢の記述は、奈良時代に新国家建設の理念書をめざして形成された特に古事記の「天皇の超越性」を強調した創作神話によるものだと思います。
そしてそれは、日本書紀では、天照大御神を太陽神とはっきり言っているのに、古事記ではこの神を「太陽のように光輝く」として、太陽そのものではないかのように扱っているところによくあらわれています。
しかし、 もし、 後者 の古事記の 説 を 取る と なる と、 実は、 おかしな こと に なる の です。
神社神道 は、 自然 の 中 に 神 を みる 自然宗教 と 言い ながら、 世界 の 中 で 日本 だけが、 太陽 という 威 大 な 自然 だけは 祀る こと が なかっ た 唯一 の 国 で ある、 という こと に なっ て しまう から です。
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太陽神と天皇の共通項は仁愛にあり
しかし、私見ですが、天照大御神が太陽神で何故いけないのでしょうか?
太陽こそは、一視同仁(いっしどうじん、全ての人を平等に見て一様に仁愛をほどこすこと)の存在であり、天照大御神もその御名代(御代理)の天皇もまたこの仁愛そのものであらせられる御存在ではないでしょうか。
しかし この 問題 は 神社 界 では 、触れることを恐れてか、放置 さ れ た まま にさ れ て い ます。
そういうわけで、トヨ ウケ を 祀る 外宮 の 方 から なぜ先 に 祭儀 を おこなう のか、 という「 外宮 先 祭」 の 意味 も わからないのです。
しかし、「 委細 心得」 と 弥生 語 から みる と、 両 宮 の 関係 は、 はっきり し ます し、 以上 の 疑問 も すべて、すべて 氷解 し ます。
太陽 の 神霊 で ある 太陽神、 天照大御神 の エネルギー が、 地 に 降り注ぎ 地 から 湧き出る その エネルギー こそ が、 トヨ ウケ の 神 なので あり、 その エネルギー が 万物を 生成 化育 する から こそ、 別名、「 御饌 津 神」 とも いう の だ、 という こと、そして
別名、 ウカ の 御魂 として、「 稲荷」 の 神 でも あるのです。
トヨ ウケ の 神 とは、 はっきり 言え ば、 天照大御神 の 分身・分霊 なの です。
「委細 心得」 は この こと を「 オオヒルメ 大 霊( 天照大御神) が 豊 受 の 神 を〈 わが 生母 珠(ウカのタマ)〉 と 言っ て 分霊 で ある こと」 を はっきり と 伝承 し て い ます。
従って、「 外宮 は 内宮 より 一段 神格 が 下がり ます が……」( 二 〇 一 〇 年 の 時点 での 伊勢 の 神宮 の 広報 課 の 見解) など といった 見方 は、 間違い で ある という こと が はっきりと分かり ます。